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【ゲーセンの中の人インタビュー】VGMロボット(埼玉県深谷市)しのさん-後編

埼玉県深谷市。籠原駅と深谷駅の中間あたりに立地しているゲーセンが「ビデオゲームミュージアム ロボット」通称“深谷ロボット”です。

「ビデオゲームを愛する人たち」の一人でもあり、「深谷ロボットの店員」でもあるのが、「しの」さん。

しのさんの生声、後編です。最後までお読み頂ければ、嬉しいです!!

前編はこちらです!)


ビデオゲームミュージアム ロボット 深谷店

〒366-0052 埼玉県深谷市上柴町西4丁目12−1

youtubeアカウント:https://www.youtube.com/@VGM_Robot


今の仕事のメインは、“ゲーセン店員”ではない。

入社したからにはもっとお店を盛り上げようということで、対戦会以外の企画もしていて、ちょっと違う事に取り組んだりもしています。例えば、社長が“地球防衛軍 5”を買ってくれたので、深谷ロボットのYoutube公式チャンネルから地球防衛軍 5のゲームプレイ動画を配信することにしたんです。「配信するなら何か企画いれよう」と思って「業務時間中のプレイではなく、“サービス残業”で攻略目指します!!」っていうのをやりました(笑)。サービス残業っていう言葉を配信タイトルにもつけた(笑)し、コメント欄にも「サビ残おつ!」みたいなコメントが並んで(笑)。ゲーセンのゲーム配信なのにサービス残業みたいな演出をしてみたり…あ、実際は、サービス残業じゃなくてちゃんと許可取って配信してましたよ(笑)。

あとは、昆虫食が流行り出した頃、ウチのガチャガチャにも、昆虫食を入れてたんですよね。だから「うちはゲーセンだけどガチャガチャもやってるよ」っていう宣伝も兼ねた企画で、配信ネタにしました。どういうものかというと、まずはいつも通りゲームプレイを配信する。その配信中に“スパチャが入る”か“プレイがゲームオーバーになった”ら、昆虫食ガチャガチャを回して、出てきた昆虫食を食べるっていう企画です。もう、めちゃくちゃ盛り上がりましたね。本当に、お店のゲーム配信では、自由に、いろんなことをやらせてもらってますね。

こんなふうに、今の仕事のメインは、いわゆるゲーセン店員ではなくなってます。“ゲーセン”の業務は、Twitter運営と、時々の撮影案件くらい。実は自分がやっている業務のメインの業務は、殆どがガチャガチャの運営です。各地のガチャガチャコーナーを巡回して、運営しています。これ(ガチャガチャ)はこれで運営が難しいんですよね。でも売上とか営業とか僕が興味あるところだから、ガチャガチャの売上をあげていくのが楽しいんですよ。僕にとっては、ガチャガチャの売上をあげるのも“ゲーム攻略”感覚です。

僕は結構流される人なので、望まれたところで働きたいタイプ

僕がロボットに入るきっかけになったのは社長ですけど、普段はあまり社長とは会わないんです。ただ会った時にはいろんな仕事案件の話をしてますね。仕事以外での話しだと、社長はアニメが大好きなので、アニメの事を教えてもらっています。例えば、秩父にガチャガチャの巡回で行き始めた時、社長に「秩父と言えば、“あの花”(注:アニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」)見なきゃ駄目だよ」「“あの花”見て泣かない人とは、仕事できません!」って言われて(笑)。で、すぐ見て…そしたら、僕、もう号泣でした。今なんかsecret base (注:エンディング曲)が流れてきただけで泣けてきますもん。そんな風に社長とは主に仕事の話と、アニメの話が多いですね(笑)。

あと、社長はゲーマーでもあって、特にシューティングゲームは上手いですよ。コロナで緊急事態宣言が出た時、ゲーセンが営業出来なくなりましたよね。その時期の社内会議中、社長がいきなり「社内ゲーム大会やろう!」って言いだしたんです(笑)。午前の会議中だったから「この後昼飯食べて、午後になったらやるぞ!」って。思いつきなものだからそんな丁寧なものじゃないですよ。「Youtube配信もするぞ!」って言うんだけど、やり方は“スマホで直撮り”だったり(笑)、しかもド平日 だったんですよ!(笑)、「平日昼間、思いつき配信、誰か見てくれるのか!?」っていう(笑)。

配信始めて、最初に「今から社内でゲーム大会始めます」って宣言して、で、まずプレイしたのがバーチャファイター5ファイナルショーダウン。これはうちの社長、超強いんですよ(笑)。もう全員フルボッコにされて。で、「じゃあ次のタイトルはエックスだ!」って言って、僕が全員フルボッコにするっていう(笑)。相手が社長とか関係ないです(笑)。でも社長のザンギ、圧もあって、すごく強かったですよ。

僕のSNSアカウントの投稿には、仕事の愚痴がないんです。社長から見たら「いやいや仕事の愚痴、あるだろう」って思われてるかもしれない。でも本当に仕事の愚痴は絶対、全くなくて。強いて言うなら、運転中の…マナーが悪いドライバーとか、追い越し車線の低速とか、そういうのくらい(笑)。楽しくやらせてもらってます。僕は結構流される人なので、望まれたところで働きたいタイプ。ここは自分が必要としてくれてる、望まれたらそこで働くって形になるかな?でも、みんなそうなんじゃないかな。

そういえば“深谷ロボット”の店名は、昔(ゲーセンの)リンリンがあったところに「おもちゃのロボット」っていう店名のおもちゃ屋さんがあって、そこから来てるんですよ。会社名が“ロボット”って、ちょっと普通じゃない、会社名っぽくないじゃないですか。ロボットを社名につけちゃうんだ、楽しいものや楽しい事が好きそうな人がつけるんだろうなって思いましたね(笑)。

僕らは、このモニターの角度とコンパネの高さ。これが結局全てなんです

ゲームセンターって、お客さんは“遊びにくる場所”だし、僕ら中の人から見たら、“仕事であり、お金を稼ぐ手段”ってことになる。今ゲーセンがどんどんなくなっていっていて。で、僕は、ゲーセンが盛り上がるとか盛り上がらないとかっていうのは、ゲームの種類では多分無いっていうふうに思っています。し、そう思った出来事も、結構あるんです。もちろん、メンテみたいな事は最低限必須ですけど。

だって同じゲーム…例えばエックスだって、僕がプレイヤーとしてロボットに流れ着いた時のロボットには、エックス目当てに来店するユーザーはほぼいなかった、プレイしていなかった、ですよ。ところが最近なんか、エックスのプレイヤーに「この前、平日の夕方だし誰も来ないだろうと思ってやってたら、乱入でボコボコにされましたよ!(笑)」って言われたりするんですよ。

だからこんな風に、プレイヤーさんは「今日、店に誰かいるかも?」って思えるとふらって来店して、誰かいるから対戦が始まって、それでインカムが発生して売上になる。しかもそこで対戦が盛り上がってどんどん対戦が続いていくことで、インカムが上がっていく。

だからやっぱり、“対戦が続く”っていうのは、そこにいる“人”なんですよね。ゲーセン側は、その“箱”を用意はするんですけど、活気づくためにはそのゲームを盛り上げる中心となる“人”が必要なんですよ。特に対戦ゲームは。各タイトルに、ちゃんとコミュニティが出来ているお店って、そのタイトルのインカムも良いと思うんですね。

深谷ロボットのエックスは、やっぱり僕が盛り上げなきゃいけないって思ってる。鉄拳8だろうがスト6だろうが「新しいのが出ます!」っていうだけでよければ家庭用(コンシューマ)で充分なわけなので。でも多分、僕らプレイヤーは、この椅子の高さ、このコンパネの高さ、このモニターの角度、これがもう、めちゃくちゃ重要なんですよ。椅子はまだなんとかなるかもだけど、このコンパネの高さとモニターの角度。これが結局全てなんですよ。これを超える環境はもう存在しない。

例えば、僕も友達とLINE通話しながらPS4でネットワーク対戦した事があったんですけど、ゲーセンの対戦台と全然違うんですよ!“負けて両替に行く”っていうあの悔しさが無いとか!わかります(笑)?!勝った方は(Continueするための100円玉)両替はいらないんですけど、負けた方は、負けて自分にイライラしながら両替のために席立って、対戦台の向こうにいる相手の顔が見えて、その相手に「あんなのやられたらもう何もできないっすよ!」って言ったら「いや、あれは返す方法がある。お前が対策不足」とか言われながら両替して、また100円玉投入して、このままだとまた負けるから周りにいる人に「あれどうやったらいいんすか?」って聞いたら、「こうやったら返せる、ちょっと貸してみ」ってプレイ見せてもらって研究するとかっていう。これが醍醐味ですよ。これがなくなったらもう本当に終わりだと思うので。で、多分それが、ゲーセンの良さそのものでもあると思うんです。

守ったって多分なくなる。多分守りきれないと思う。

コンシューマハード(注:家庭用ゲーム機)でももちろんオフライン大会とかやっておられるので、それはそれで僕は逆にすごくメーカーさんの大事な要素だと思ってます。けど、ゲーセンならではの要素、ここに集まった人たちと話をしながら対戦しながら「明日早いのに楽しすぎて帰れない」っていう、こういうのってやっぱり重要だと思うので。集まってる人が楽しいと、楽しい雰囲気が生まれて、その空気が伝播する。やっぱり対戦ゲームに関してはそういうコミュニケーションが楽しい。明るい殴り合いの場ってゲーセンならではのものじゃないですかね(笑)。

でもそれを“守る”みたいなつもりは全く無くて、守ったって多分なくなる。多分守りきれないと思う。じゃなくて、やっぱり攻める。攻めて攻めてっていう。具体的には“知ってもらう”ですかね。基本的には攻めですよ、攻め。ゲーセンのスタッフだし、僕は本田使いだから、攻める(笑)。

ウチの店を見ていると、前と遊ばれ方が若干違ってきたっていう感覚があります。前は、“平日ふらっと来て、ふらっと対戦して帰る、で、週末にガッツリ行く”だった。けど、今は、多分平日はお客さんがなかなか来てないと思いますね。僕自身、一応スタッフさんの指示とかガチャガチャ関係のことで平日来たりはするんですけど、ひどい時は本当にもう。何にもプレイしないで帰っちゃう。前は絶対、店に来たら何かしらやってたのに。

僕の話になっちゃいましたけど(笑)、若い人がふらってやって来てって感じにはならなくなりましたよね。来る人は40〜 50 代が圧倒的に多い。YouTube の配信なんかは若い人も見る事があるみたいですけど、ウチの店を見渡してみたら、あのあたりの音ゲー(注:ⅱDXやサンボル)、カード(注:艦これ、アセべなど)みたいな、サーバー課金が必要なゲームにちょっと20〜30代くらいの若い人がいるかな、ってくらいですね。

メーカーが食えなかったらゲーセンは潰れる。

社長がよく言いますけど、メーカーが食えなかったらゲーセンは潰れるっていう。なので、レトロゲームメインじゃ駄目。メーカー課金的なゲームも必要だろうし、まあ結局ウチでも、これだけ(注:割合として、新作1割・旧作9割くらい)の台数差があるのに、売上でいえば逆転しますよね。新作が売上の殆どを占める、どこもそうだと思いますけど、ウチは特に、現状プライズを置いていないので余計ですね。

ゲーセンは厳しいと思います。やっぱり、コロナがあって、しかも期間が長かったので、皆さんに新しい生活習慣がやっぱり、生まれてしまったのかな、と…。まあこのくらいコロナの期間が長いと、生活の変化・環境の変化もあるので、例えばコロナでゲーセン行かなくなった間に、転職されたりお子さん生まれたりして、生活が変わっちゃったとかもあるだろうと思いますし。

あと電気代がめちゃくちゃ上がってしまったから、ウチは節電で店内のビデオゲームの電気を落としてるんですよ。それの影響はありますね。電源落としてたらデモ画面すら見られないですからね。例えるのであれば“匂いのしないデパ地下”みたいだなと。デパ地下っていろんな匂いがあるじゃないですか?あれ、多分いろんな匂いが入ってきて、視覚と嗅覚とかで、買っちゃうと思うんですよ。近いところで、出店とか屋台とかもそうだと思うんですよね。あの出店のお好み焼きの匂いとか視覚と嗅覚とで買っちゃうっていう。多分五感全部使って初めて成り立つもの、商売ってあるんだと思ってて。ビデオゲームで電源落としちゃうと、聴覚ゼロ・視覚もゼロになる。妄想だけっていう(笑)。筐体に貼ってある“レイストーム”ってタイトル見て「レイストームってこんなゲームだったよな」「こういうプレイしたらこうなったよな」ってわかる人しか、プレイしようと思えないだろうなと思います。

ゲーセンごとに特色がある。全店が“聖地”だと思う。

これまでウチは旧作のビデオ格ゲーは50円だったんですけど、2月1日から料金が倍にあがってしまった。50円のは100円、100円のは200円とかになったんです。でも実は、インカム総額はあんまり変わってなくて。これは皆さんがそれだけやって下さってるっていう事なので、感謝の気持ちしかないですね。まあ40年間100円っていう、プレイ料金に消費税を乗せられていない業界問題は別途ありますけど。

とはいえ「ウチは古いビデオゲームの聖地だ」って威張るつもりもないです。周りがそう言ってくれると光栄ではありますけど、でも、“聖地”は多々ある。この土地周辺だとウチは台数はぶっちぎりで持ってはいますけど、そもそもゲーセン自体少ないからある意味、ゲーセンっていうだけでどこも聖地なのかなって思ったり。各ゲーセンごとに特色があるってことだと思うんですね。例えば、旅行者が行きたいって思う観光地みたいなゲーセンもありますし、ウチみたいなコミュニティ重視みたいなゲーセンもあります。それぞれ特色を持っているので、全部“聖地”ですよね。

最後に

ゲーセン業界で働く事を検討している人へ

今、ゲームセンターって難しいなと思いますね、だから、“「ゲームが好きならいいんじゃない?」ってだけではない”、っていうメッセージは伝えようかなと思います。ゲームが好き、っていうことはすごく良いんですけど、なんか、その人の中に“ゲームセンターとはなんぞや”っていうのがちゃんとあるのが大事だと思います。「ゲームセンターで働いたらものすごい稼げるぞ」とかはないので。だから「ゲーセン勤務を通じてどうなっていきたいか?」ってものがあればって思います。「とりあえず学校の近くだからバイトする」みたいなのはちょっと別として、フルタイムで、業界で、しっかり働きたいぞ働くぞっていう人の場合には「それで何したいの?」「そこから何を得るの?」つまり“ゲーセンを通じてどうなりたいか”っていうのがあった方が良いなと。

「プライズが大好きでプライズでもっともっとあげたい」とか「自分でメンテして環境良くしたい」みたいなので良いから、音ゲーでもなんでも「コミュニティ作っていきたい」とか「このタイトルの売上あげていきたい」とか。例えば、僕であれば「このお店で、スト2プレイヤーを増やしたい」っていうのがあって。もう誰しもが知る、エックスで・スト2で盛り上がってるお店って言われるようになって、牽引していきたいっていう。さらにそこからコスプレイヤーさんとか出てきて、土地ごと有名な大会とかになればいいねっていう感じですね。

今、ゲーセンに全く行ってない人たちへ

ゲーセンに行ったことがない人も少なからずおられると思うんですけど、別に怖いところではないので、ぜひ実際の店舗に足を運んでみてもらいたいですね。(有名な)台バンとか足のっけてとかヤンキーとか、そんなところではもう無いので。動画とかSNSだけではなく、ご自身の五感で、実際のゲーセンを体験してみてほしい。

“昔はゲーセンに行ってたけど今は行ってないな”って人には、たまにはゲーセンで、100円入れる感覚とかレバー触った感覚とかボタン押した感じとか、思い出してみてほしいですね。多分今でも、レバーを触ったら、癖で、レバーボール1回しめる(回す)と思うんですよ(笑)。どうですか?そろそろ1回レバーしめに来た方が良いんじゃないですか?って(笑)。こういう思い出もひっくるめて、楽しみに来てほしいなって思います。もちろんウチ(注:深谷ロボット)じゃなくて良いので。

「ビデオゲームミュージアム ロボット」と「ゲーセン業界で働くしのさん」として

もっとこのお店から、ゲーム配信とかしてもらいたいんです。ウチの特徴として、普通の人でも気兼ねなく配信できるので。別にそんな“YouTuberです!”とかじゃなくても、配信機材とか「初心者だけどやりたい」って言ってくれれば貸しますし教えますし、しゃべるのが苦手な人なら「じゃあマイク無しで、しゃべらないで画面配信だけで」とかも全然できるので、そういう配信とかやってくれたら、すごく嬉しいですね。

僕自身50 歳になってしまいましたが、ゲーセンコミュニティもどんどんどんどん年齢があがってます。先日、ウチの対戦会に高校生がいたんですよね。お金がないから、定額の対戦会に定期的に行く感じだって。強い弱いとか定期不定期とか関係なく、こういうふうに新しい人が来てくれると嬉しい。新しい方が入ってきてくれないと、コミュニティが無くなるので。ゲームセンターっていうコミュニティを無くしたくない。

今年に入ってやっぱりまた閉店が増えてますよね。まあ多分、家賃更新と電気代とか色々天秤にかけた時に閉店っていう判断になるんだと思うんですけど、で、商売だから仕方がないっていうかそういうものですけど、なんとかここは、なんとか盛り上げて、ゲーセンのコミュニティを残していきたい。

社長曰く、ウチのこのお店は「株式会社ロボットの象徴」だと。残っていけるように、なんとか盛り上げていきたいです。僕も、永遠の中二として、頑張っていきます(笑)!


しのさん、お忙しい中、ありがとうございました!

オフライン・オンライン問わず、「ゲーセン文化」を発信し続けてくださる深谷ロボットさんとしのさんには、本当に感謝ですし、一緒に頑張らせて頂きたいなと思いました。

深谷にしっかり根付いているコミュニティの皆さんに会いに、また遊びにいきます!!

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